HEG-20-10-1|The Politics of Supported Bias

男系男子というバイアス

── 制度は何に支えられていたのか

男系男子継承は、長い歴史を持つ制度である。

しかし、本当に持続していたのは制度そのものだったのだろうか。

制度は単独では存在できない。

制度は必ず何かに支えられている。

われわれは、その不可視の条件を support と呼んできた。


男系男子継承という制度も例外ではない。

それは単独で持続していたのではない。

長い歴史の中では、側室制度 という半ば不可視の support に支えられていた。

男系男子という価値(value)は、側室制度という support の上ではじめて制度として安定していたのである。


ところが明治天皇を最後に、側室制度は消滅した。

つまり、男系男子という制度を支えていた support が失われた。

しかし、support が失われても、bias は消えない。

support disappears.lag remains.

残るのは、男系男子という価値への拘りである。


男系男子継承という制度を維持するには、新しい support が求められる。

その結果として現れているのが、男系男子養子論であり、男系女子天皇論であり、女系天皇論などである。

これらは単なる意見の違いではない。

失われた support を、何で補完するのかという制度設計の違いである。


重要なのは、価値そのものは変わっていないことである。

変わったのは、価値を支える条件である。

制度改革とは、価値を書き換えることではない。

価値を支える support を書き換えることである。


このことは、皇室制度だけに限らない。

あらゆる制度は、ある価値を前提として成立し、その価値は、さらに別の support に支えられている。

そして support が見えなくなるとき、制度は自然なものとして受け入れられる。

逆に support が露呈したとき、制度は政治問題となる。


だから、現在の皇室典範をめぐる議論の本質は、男系男子か、女系か、という対立だけではない。

何が制度を支えてきたのか。

そして、

何がこれからの制度を支えるのか。

という問いなのである。


制度は価値を支える。

しかし価値もまた、新たな support を要求する。

世界は変わる。

support は変わる。

制度も変わる。

しかし、人々の bias は、そう簡単には変わらない。

だから政治とは、異なる価値を争わせることではない。

異なる価値が持続可能となる support を編集し続ける営みなのである。


「男系男子」は制度ではなく、supported biasである。


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本稿(HEG-20-10)は皇室制度を論じているのではない。supported bias という制度一般の構造を、皇位継承制度を事例として考察している。


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