HEG-20-06|Politics of Coexistence
象徴天皇型憲法平和体制の終焉
── 見えなかった支えは、なぜ見え始めたのか
戦後日本は「九条平和国家」と呼ばれてきた。
しかし、本当に日本の平和を支えてきたのは第九条だけだったのだろうか。
戦後GHQは、象徴天皇制と戦争放棄を、天皇の戦争責任を回避する対外的な説得材料にした。
九条は対外平和を規定した。
だが、その対外平和を静かに支えていたのは、第一条に定められた象徴天皇制による対内平和だった。
象徴天皇は統治しない。
命令もしない。
政治的意思も示さない。
しかし、その「何もしない」存在が、国民統合という不可視の支えとして機能していた。
それは制度として意識されることさえ少なかった。
支えとは、安定している間は見えないからである。
ところが現在、その不可視の支えが急速に可視化され始めている。
皇室典範改正をめぐる議論は、単なる制度改正ではない。
象徴天皇制そのものを直ちに解体するものではないとしても、それを支えてきた「国民の総意」という支持構造を政治化する契機となっている。
支えが政治化されたとき、支えはもはや背景ではなくなる。
背景だったものが前景へ現れる。
制度は、その瞬間から揺らぎ始める。
九条をめぐる安全保障環境の変化も同時に進行している。
対外平和を支える制度的歯止めが揺らぐ一方で、対内平和を支えてきた象徴秩序もまた可視化され、争点化されている。
私たちは今、「象徴天皇型憲法平和体制」の終焉という歴史的転換点に立っているのかもしれない。
問題は制度改正そのものではない。
見えなかった支えが見え始めたことである。
そして支えが見え始めたとき、制度は新しい位相へ移行し始める。
戦後憲法は、単なる国内憲法ではなく、敗戦国日本を国際社会に再接続するための正統性再構築パッケージだった。
その柱が、
象徴天皇
戦争放棄
の二本立てだった。
つまり、一条で「日本は内側から暴発しない」と示し、九条で「日本は外側へ暴発しない」と示した。
だから、
第1条:対内的な鎮静装置
第9条:対外的な鎮静装置
だったとも言える。
GHQにとっても、日本政府にとっても、国際世論にとっても、この二本がセットで必要だった。
そして今、その両方の support が揺らいでいる。
戦後日本の平和体制は、九条平和ではなかった。
象徴天皇による対内平和と、戦争放棄による対外平和を組み合わせた、一条=九条平和体制だったのである。
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