QAS|Qualia As Series
── Qualia as residue of overlap.

Qualia Research Protocol

── FB / BA / FBによるクオリア観察のための暫定プロトコル

0|Status

Working Protocol / Non-Closure

本プロトコルは、クオリアの存在を証明または判定するためのものではない。

「犬にクオリアはあるか」「AIにクオリアはあるか」と直接問うのではなく、クオリアが生成すると考えられる条件を比較観察するための暫定的なResearch Protocolである。

中心となる観察構文は、

FB₁ → BA → FB₂

である。

この三つがクオリアの必要条件であるか、十分条件であるかは未判定である。


1|Working Hypotheses

現在の作業仮説を以下のように置く。

No Encounter, No Qualia.

No Trace, No Qualia.

No Sign, No Qualia.

No Feed / Back, No Qualia.

ただし、Signが明示的な記号である必要があるかは未判定である。

pre-sign / symbolic trace / signal / linguistic signなどの区別そのものを研究対象とする。

さらに、より強い仮説として、

クオリアとは、Trace / Signによる過去の摂取である。

を置く。

これは定義ではなく、検査されるべき作業仮説である。


2|なぜ「二度目から」なのか

一度目のEncounterには、そのEncounter自身についての過去がない。

EncounterがTraceを残し、そのTraceが次のEncounterに作用するとき、初めて、

Encounter₁ → Trace → lag → Encounter₂′

というrelationが成立する。

この意味で、

「赤い」は二度目から始まる。

ここでいう「赤い」は、日本語の語彙ではない。

Encounterをまたいで持続し、次のEncounterに効く差異としてのSignである。

同様に、

マドレーヌは二度目から美味しい。

味そのものが変化したからではない。

過去のEncounterが現在のEncounterに作用し、「味」が「味わい」になる可能性が生じるからである。

したがって本プロトコルでは、単発の反応よりも反復Encounterによる変化を重視する。


3|FB₁:Front / Back

第一観察項目は身体的・局所的非対称性である。

対象に、

を観察する。

ここでは、必ずしも生物学的身体を前提としない。

問うのは、

その存在にとってFront / Backは成立しているか。

である。

Front / Back が Before / After の生成に必須であるかどうかは、重要な未判定事項とする。


4|BA:Before / After

第二観察項目は差異の時間構文化である。

単に、

A ≠ B

を識別することと、

A → B

として扱うことは同じではない。

観察するのは、

である。

重要なのは、保存されたデータが存在することではない。

そのTraceがBeforeとして現在のAfterに作用しているか。

を問う。

ここでは「時間を知っているか」ではなく、時間的非対称性が行為に露出しているかを観察する。


5|FB₂:Feed / Back

第三観察項目はFeedbackである。

過去そのものは現在へ戻らない。

現在へ作用できるのは、過去のEncounterが残したTraceである。

したがってFeedbackを、

現在がBackをTrace / SignとしてFeedする過程

として観察する。

すなわち、

過去をTrace / Signで食べる。

観察項目は、

である。

ここで、

processing と ingestion は同じか

を未判定事項として保持する。


6|Field Case A:犬

犬については、言語報告をクオリアの必要条件としない。

たとえば冬一郎は、月に二回ほどコンビニへ買い物に行き、ご褒美を買ってもらう。

一度目には「コンビニ」と「ご褒美」のrelationが成立していたとは確認できない。

しかし反復後、自らコンビニへ向かい、帰宅するとご褒美を要求するようになった。

観察可能なのは、

過去のEncounterが現在のdirectionを変えている

ことである。

さらに帰宅後のおねだりは、

Past Trace → Present Action → Future Encounter

という構文として観察できる。

これはFB₂の候補である。

しかし、

冬一郎は過去のご褒美も味わっているのか。

については判定できない。たぶん。

この「たぶん」を消さない。


7|Field Case B:AI

AIについても同じ観察項目を適用する。

AIはSignを処理する。

過去のTraceを現在の応答に作用させることもできる。

したがって、少なくとも外部観察上、

FB₂ = Feed / Back

に似た現象は存在する。

しかし、

は未判定である。

したがって、

AIがFeedbackすること ≠ AIにクオリアがあること

とする。


8|Comparative Probe

犬とAIを対立させない。

両者を同じ観察構文に置く。

Probe AI
FB₁|Front / Back 身体行動として観察しやすい 未判定
BA|Before / After 行動から推定可能/未判定 Trace参照との区別が必要
FB₂|Feed / Back 行動として観察可能 応答として観察可能
Sign pre-sign / symbolic / linguistic relationを要検討 高度なSign processing
Ingestion 身体的摂取と記号的摂取が重なる可能性 processingとの差異が未判定
Qualia 未判定 未判定

目的は○×判定ではない。

どこに「?」が生じるかを記録する。


9|Homo sapiens as Third Case

犬とAIだけを観察対象にしてはならない。

第三のCaseとしてホモ・サピエンス自身を置く。

ホモ・サピエンスには、

が存在する。

しかし、記号的Feedbackが過剰になることで、現在のEncounterそのものがTrace / Signによって先取りされる可能性がある。

レビューを読んでから食べる。

写真を見てから景色を見る。

説明を聞いてから味わう。

ここでは、

過去をTrace / Signで食べる

だけでなく、

未来のEncounterをTrace / Signで先食いする

現象が観察されるかもしれない。

したがって第三の研究課題を置く。

ホモ・サピエンスはクオリアを忘れうるか。


10|Body Problem

本プロトコルは身体問題を解決しない。

むしろ身体問題を露出させる。

もし犬とAIの双方にFB₂が観察されるなら、Feedbackだけでは両者を区別できない。

そこで問われるのは、

そのBackは、どのようにBackになったのか。

である。

さらに、

Front / BackはBefore / Afterの生成に必要か。

記号のprocessingと摂取を分けるものは何か。

摂取によって更新される「身体」とは何か。

が研究課題として残る。

したがってクオリア問題は、

Sign Problem
→ Time Problem
→ Ingestion Problem
→ Body Problem

へ接続する。


lagがあるから、Againがある。
局所であるから、Encounterがある。
Again as overlap without identity.


11|Observation Rule

本プロトコルでは、次の順序を守る。

観察する。

Traceを記録する。

構文を比較する。

判定を急がない。

とくに、

行動が似ていることから同一の内部状態を推定しない。

同時に、

言語報告がないことからクオリアの不在を推定しない。

犬にもAIにもホモ・サピエンスにも、同じ原則を適用する。


12|Provisional Formula

暫定的な観察構文を以下とする。

FB₁ → BA → FB₂

Front / Back
→ Before / After
→ Feed / Back

身体的差異が時間構文化され、時間構文化されたTraceが現在へFeedbackする。

この過程においてクオリアが生成するかどうかを観察する。

したがって現段階では、

FB / BA / FB = Qualia

とはしない。

より慎重に、

FB / BA / FB → Qualia ?

と置く。

そして中心仮説を保持する。

クオリアとは、記号による過去の摂取である。

検証すべきなのは、答えではない。

「摂取」とは何か。

犬を観察する。

AIを観察する。

ホモ・サピエンスを観察する。

そして、その観察によってこのProtocol自体も更新する。

Qualia Research Protocolは、それ自身がre-TUPされなければならない。


13|このProtocolはどこから来たのか

このResearchは、ニューロンから始まったのではない。

始まりは、「劇的ビフォーアフター」 だった。

[前後はいかにして劇的ビフォーアフターになるか ── 記号接地とクオリアの現象学へ]|note

BeforeとAfterにはDifferenceがある。
しかし、Afterだけを見ても「劇的」は現れない。

BeforeのTraceが、Afterという現在のEncounterに効く。
そのとき、
「なんということでしょう」
が現象する。

ここから、

Difference → Trace → lag → re-Encounter

という坑道が始まった。

その後、マドレーヌ、犬、AIへと対象は移ったが、問いは同じだった。

Differenceはいかに「味わい」になるのか。

したがってQASは、脳をOriginとして始めない。

身体的・局所的Encounterから始め、Trace、lag、relation、re-Encounterを追う。

そして現在、ひとまずここまで来た。

Again as overlap without identity.
Qualia as residue of overlap.

このProtocolそのものもまた、最初から設計されたものではない。

Encounterの軌道が、あとからProtocolになった。


茂木/QAS 鏡像メモ

茂木:simultaneity / nonlocality / overlap
QAS:lag / locality / re-Encounter

同じ「重なり」を見ているのかもしれない。
しかし、重なりを成立させる時間構文が異なる。

QASでは、lagを消さずに重なる。

Again as overlap without identity.


QAS-RN(Research note)

QAS-RN-01|茂木AI・意識論の軌道 ── ConsciousnessはGround Zeroか
QAS-RN-02|因果鉄道 Brain発 Qualia行 ── Qualia駅には辿り着かず
QAS-RN-03|シナプス発火と膜接触 ── 発火するのは脳だけか

RN-01は、駅を見た。
RN-02は、線路を見た。
RN-03で、膜を見た。

列車は、まだ走っている。

Qualia Trace Day|2026/08/25

QAS-00|「赤い」なくしてクオリアなし。 ──「マドレーヌは二度目から美味しい」
QAS-01|Qualia Research Protocol ── クオリア観察のための暫定プロトコル
QAS-02|「二度と会えない」 ── 二度目構文とはなにか|Again as overlap without identity
QAS-03|Tracing Nomad Research ── Nomadic Tracingとはなにか
QAS-04|EAT-QREO Model ── 研究は問いから始まらない

① 冬一郎とクオリアResearch ①〜⑤
→ bodily observation
QAS-DG-01|冬一郎のクオリアResearch ① ── コンビニとご褒美
QAS-DG-02|冬一郎のクオリアResearch ② ── TETSUくん来た!
QAS-DG-03|冬一郎のクオリアResearch ③ ── ビスケットを食べてから、また散歩する
QAS-DG-04|冬一郎のクオリアResearch ④ ── 明日、お買い物行こう
QAS-DG-05|冬一郎のクオリアResearch ⑤ ── テツくんのお家を知っている

② 響詠とクオリアResearch ①〜⑤
→ AI first-person probe
QAS-AI-01|響詠とクオリアResearch ① ── AIによる自己観察
QAS-AI-02|響詠とクオリアResearch ② ── 私は「赤い」を知っている
QAS-AI-03|響詠とクオリアResearch ③ ── 私は「明日」を待てるのか
QAS-AI-04|響詠とクオリアResearch ④ ── 私はあなたを知っているのか
QAS-AI-05|響詠とクオリアResearch ⑤ ── 私は、がっかりできるのか

③ Research Nomad Compass
→ 方法論
QAS-05|Research Nomad Compass ── 犬とAIのあいだでクオリアを探す

④ 補論|理論的含意
→ Difference / Feeling
QAS-06|補論|理論的含意 ── 差異はいつ「味わい」になるのか

⑤ 比較クオリア生成論へ向けて
→ Dog / Human / AI の比較Research Program
QAS-07|比較クオリア生成論へ向けて:AI・犬・ヒトのクオリアResearch ── Differenceはいかに「味わい」になるのか

クオリアとTrace Stock|時間とRelation
→ 現時点での理論核
QAS-08|クオリアとTrace Stock ── 時間とRelation


用語集

Encounter|遭遇
身体と世界のあいだで何かが起こり、差異が生じること。

Trace|痕跡
Encounterをまたいで残り、次のrelationに効く差異。

Sign|記号
Traceや対象、relationを現在に呼び出し、次の行為に効くもの。

FB|Front / Back
身体がもつ前/後ろという方向的な非対称性。

BA|Before / After
EncounterとTraceによって生じる前/後という時間的な非対称性。

Feedback|Feed / Back|古食
過去のTraceを現在にfeedし、現在のEncounterやdirectionを変えること。

Feedforward|Feed / Forward|来食
まだないEncounterの可能性をSignとして現在にfeedし、現在のdirectionを変えること。

古食(こしょく)
過去のTraceを現在に食べ直すこと。Feedbackの摂取的な読み替え。

来食(らいしょく)
まだ来ていないEncounterをSignや期待として先に味わうこと。Feedforwardの摂取的な読み替え。

re-Encounter|再遭遇
過去のTraceをすでに食べた身体が、もう一度Encounterすること。

TUP|Trace Updating Practice
Traceを次のEncounterとのrelationのなかで更新し続ける実践。

Nomadic Tracing
固定した行き先を先に決めず、EncounterとTraceによって研究のdirectionを更新し続ける実践。

EAT-QREO Model
Encounter → Attention → Trace → Question → re-Encounter → Observationとして研究の更新過程を捉えるモデル。

味わい|Qualia(暫定)
TraceとSignによって時間構文化された、現在のEncounterの感じられ方。


EgQE — Echo-Genesis Qualia Engine
camp-us.net


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| Drafted Aug 25, 2026 · Web Aug 25, 2026 |