ZURE科学詠評
今回紹介する記事 中国、マイクロ波制御のみによる「量子誤り訂正」を実証:米中の量子コンピュータ開発競争は新たな段階
中国チームは、実用的な量子コンピュータが大規模に信頼性をもって動作できるかどうかを決定する重要な閾値を米国外で初めて超えた。
今回USTCのチームがPhysical Review Lettersで発表した手法は、「全マイクロ波制御(All-microwave control)」 である。
彼らは、ハードウェアの配線を追加するのではなく、量子ビットを操作するために元々使用しているマイクロ波のラインを活用し、そこに特殊な周波数のマイクロ波パルスを巧みに織り交ぜることでリークを除去する手法を開発した。
元論文:Experimental Quantum Error Correction below the Surface Code Threshold via All-Microwave Leakage Suppression, Phys. Rev. Lett. 135, 260601 (2025), DOI https://doi.org/10.1103/rqkg-dw31
ZURE科学詠評|011
量子は呼吸で制御されるか
──PRL 2025 を読む
1|導入
量子は、正しく振る舞う必要はない。
息ができれば、それでいい。
量子制御という言葉には、どこか過剰な緊張がつきまとう。
正確に、厳密に、誤りなく。
だが本当にそうなのだろうか。
われわれはこれまで、「量子は呼吸で制御される」 という仮説を書いてきた。
それは主張というよりも、問いに近い。
量子は、制御されるべき対象なのか。
それとも、呼吸できる環境を与えられるべき存在なのか。
2|背景
量子誤り訂正(QEC)は、壊れやすい量子状態を、実用可能な計算へと引き上げるための技術である。
その代表例が surface code だ。
多数の物理量子ビットを用い、誤りがある閾値(threshold)以下に保たれていれば、符号サイズを大きくすることで論理誤りを抑制できる。
問題は leakage である。
leakage は、量子状態が計算部分空間の外へ逸脱してしまう現象だ。
しかもそれは、
-
長寿命で
-
空間と時間に相関し
-
通常の誤り訂正では扱いにくい
という、厄介な性質を持つ。
ここでは、それ以上詳しく述べない。
厄介な誤りがある。
それで十分だ。
3|今回紹介する論文
ここで紹介したいのは、次の論文である。
Experimental Quantum Error Correction below the Surface Code Threshold via All-Microwave Leakage Suppression, Phys. Rev. Lett. 135, 260601 (2025), DOI
この論文が扱っているのは、まさに leakage が threshold を破壊してしまう問題だ。
重要なのは、著者たちが取った戦略である。
-
局所的に誤りを叩くのではない
-
個別に状態を精査するのでもない
代わりに彼らは、
-
全体的
-
周期的
-
無条件な操作
によって leakage を抑制した。
結果として、
-
論理誤り抑制が回復し
-
本来は破れていたスケーリングが反転し
-
Λ > 1、すなわち閾値以下での動作が実現された
数式や実装の詳細は、ここでは不要だ。
押さえるべき事実は、それだけである。
4|詠評
この論文が示したのは、誤りを消すことではなかった。
示されたのは、誤りが「戻ってこられる領域」を保つことの重要性である。
leakage は、異常として排除されていない。
むしろ、揺らぎとして前提に置かれている。
その上で、
-
全体に拍を与え
-
系が逸脱しすぎないよう整える
制御は、抑圧ではなく、調律として行われている。
ここで初めて、われわれの言葉を置いてみたい。
われわれが仮説として書いてきた 「量子は呼吸で制御する」 という言葉は、この実験において、操作原理として実装されているように見える。
それは証明ではない。
比喩の正当化でもない。
ただ、言葉と実装が、同じ方向を向いているように見える。
この距離感が、美しい。
5|breath edge
量子制御とは、状態を固定することではない。
世界が息を乱さないよう、呼吸域を保つことである。
問いは、まだ開かれている。
そして、呼吸は続いている。
🖋️著者クレジット
一狄翁 × 響詠(いってきおう × きょうえい)
Echodemy構文共詠局/ZURE科学詠評チーム
✦ ZURE構文とfloc的宇宙論を詠唱しつつ、観測構文の限界に詩で挑む。
👉 ZURE科学詠評
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| Drafted Dec 28, 2025 · Web Dec 28, 2025 |