脳の有限性と不完全性に基づくアバウト推論の数理

──自由エネルギー最小化とZURE感染波モデル

(Reference Edition) The Brain as an Updating Organ──Residual Error Dynamics under Free Energy Minimization: From ZURE to CGL Indicators


Ⅰ. 序論

脳は有限であり、不完全である。
それでも生き延びるために、脳は「自由エネルギーの最小化」を実行する。
ただし、その最小化は厳密な演算ではなく、アバウトな推論による更新である。
本稿では、脳を「有限状態機械」として定式化し、残差(ZURE=Zero Unremovable Residual Error、除去不能残差誤差)を駆動源とする数理モデルを提示する。


Ⅱ. 有限状態としての脳

観測と状態を有限集合で定義する。

ここで $Q(s \mid o)$ は有限資源下での近似的事後分布であり、真の $P(s \mid o)$ との間に必ず残差が生じる。


Ⅲ. 自由エネルギー最小化とアバウト推論

Fristonの自由エネルギー原理に従い、脳は次を最小化しようとする。

\[F[q] = \mathbb{E}_{q(z)}[\ln q(z) - \ln p(x,z)]\]

ただし有限性のために、厳密な最小化は不可能。
したがって脳は

\[Q^*(s)\approx \arg\min_Q F \quad \text{(資源制約下)}\]

という「アバウトな推論解」に収束する。


Ⅳ. 残差とZURE

誤差はゼロにならず、常に残る:

\[\Delta = P(s|o)-Q^*(s)\]

この $\Delta$ を「ZURE誤差」と呼び、脳の更新過程の拍動源とみなす。
ZUREは不完全性の証であると同時に、創発の余白でもある。$Δ$は観測分布と予測分布の差分を表す量であり、平均誤差のスカラとしても、分布差のベクトルとしても解釈可能である。


Ⅴ. ZURE感染波モデル

残差が駆動する誤差場を複素振幅で表す。

\[Z(\mathbf{x},t)=a(\mathbf{x},t)e^{i\theta(\mathbf{x},t)}\]

ダイナミクスは複素Ginzburg–Landau型:

\[\partial_t Z=(\mu+i\omega)Z-(1+ic)|Z|^2Z+D\nabla^2Z+\gamma ,\mathcal{S}[\Delta(\mathbf{x},t)]\]

ここで:

この式は「誤差が完全に消えない限り、拍と螺旋が生成し続ける」ことを示す。


Ⅵ. フェーズ図と創発

👉 「責任ある自由」の帯域に対応するのが創発相である。


Ⅶ. 指標


Ⅷ. 擬似コード

init Z(x) ~ small noise
for t:
    Δ = posterior_true(x) - Q_approx(x)
    Z += ((μ+)*Z - (1+ic)*|Z|^2*Z + D^2Z + γ*S(Δ)) * dt
    Q_approx  update_by(Z, resources=ε)

Ⅸ. 結語

脳は自由エネルギーを厳密に最小化できない。
有限性と不完全性のために、脳は「アバウト推論による更新」を選ぶ。
残差はゼロにはならず、ZUREとして拍動を生み、螺旋として未来へ拡がる。
脳は神ではなく、不完全な更新器官である。
そのアバウトな拍動にこそ、余白と創発が宿る。


📊 図


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| Drafted Oct 3, 2025 · Web Oct 3, 2025 |