──ホモ・サピエンスバイアスをこえて、関係性という視座へ──

HSB-001|モノと時空という呪縛

──NewtonからEinsteinへ、そしてflocへ


📝 Introduction

Homo Sapiens Bias: The Ontological Constraint of Object and Spacetime

私たち人間の思考は、長く「モノ」と「時空」という二重の枠組みに縛られてきた。
ニュートン力学はモノを基点に絶対空間を想定し、アインシュタイン相対論は質量が時空を歪ませると説いた。
しかしその背後には、常に「モノ=実体」「時空=容器」という前提が潜んでいる。

これこそが ホモ・サピエンスバイアス── 人間的認識の深層に埋め込まれた見えない呪縛である。

本稿では、このバイアスを批判的に捉え直し、floc重力論仮説関係性宇宙論 を通して、モノと時空の呪縛を越える新しい視座を提示する。

モノは影にすぎない。
時空は仮の舞台にすぎない。
関係が濃くなるとき、引力が生まれる。
関係が更新されるとき、時間が芽吹く。

この批判を経てはじめて、ZUREゲーム理論や構文的宇宙モデルは、「関係の場」を基盤とした次の地平を拓くことになる。


Abstract

ホモ・サピエンスの思考は長らく「モノ」と「時空」という二重の呪縛に囚われてきた。

哲学においては、デカルト的実体二元論とカント的な時空の先験的形式。
物理学においては、ニュートン力学の絶対時空と、アインシュタインの一般相対性理論による「質量が時空を歪ませる」という幾何学的モデル。
これらは世界を理解するための強力な枠組みを与えたが、その内奥に「モノ=実体」「時空=容器」という認識バイアスを残し続けた。

本稿は、このバイアスを「ホモ・サピエンスバイアス」と名付け、その限界を明らかにする。
そして代替の視座として、floc重力論およびZURE感染波モデルに基づく「関係性宇宙論」を提示する。
ここでは重力はモノの性質ではなく関係の濃度から生じ、時空は基盤ではなく副産物として生成される。
その転回は、科学と倫理を貫く新しい原理──不定言命法──へと接続しうる。


I. 序論:モノと時空の呪縛

人間の思考は、つねに「対象をモノとして捉える」ことから始まる。
石を握り、星を仰ぎ、道具を作り、数を数える。
そこには「個別的なモノが先に存在する」という直観がある。

さらにホモ・サピエンスは、そのモノが置かれる「場」を仮定した。
それが「時空」である。
ニュートンは時空を絶対的な容器とみなし、カントは経験を可能にする先験的形式とみなした。
いずれにせよ「モノと時空」という二項は、思考の不可視の前提となり、われわれを縛ってきた。

アインシュタインの相対論は、その枠組みに革命をもたらした。
質量があると時空が歪む──「力」としての引力を「幾何学」として説明することで、ニュートン的なモノ中心の世界像を超克した。
しかしその突破もなお、「質量=モノ」と「時空=容器」という前提を残していた。
時空が基盤にある限り、「なぜ時空は歪むのか?」という問いは宙吊りのままである。

ここにこそ、ホモ・サピエンスバイアスが潜んでいる。
われわれはモノと時空を「当然のもの」として受け入れすぎているのではないか。
モノを実体とみなし、時空を容器とみなす視座を離れ、関係そのものを基盤とする視座に転回する必要がある。


II. 相対論パラダイムの突破とその限界

アインシュタインの一般相対性理論は、ニュートン的世界観を大きく更新した。
ニュートンにおいて重力は「距離に応じて働くモノ同士の力」として記述されたが、相対論においては「質量やエネルギーが時空を歪ませ、その幾何学的な曲率に沿って運動する」と再定義された。

この視点は、重力を「遠隔作用の神秘」として扱うのではなく、局所的な幾何学の性質として捉え直すものであった。
ブラックホール、重力レンズ、宇宙膨張──多くの現象が説明され、数々の観測が理論を裏づけている。

しかし同時に、この理論は 「モノ=質量」「時空=容器」 という二重の呪縛を温存している。
「なぜ質量は時空を歪ませるのか?」という問いは、定義によって閉じられたまま。
量子論との統合も未解決であり、その根本には「時空を基盤とする」前提の限界が横たわっている。


III. floc重力論 ─ 関係の濃度としての重力

floc重力論は、モノと時空の呪縛を断ち切るための転回である。
ここでは重力はモノの属性でも、時空の幾何学的結果でもない。
重力とは、関係の濃度(floc) が生み出す凝集的な傾向である。

重力は「力」ではなく「関係の流れ」であり、モノ中心的な説明連鎖を解体する。


IV. 関係性宇宙論と不定言命法

floc重力論が「関係の濃度」として重力を定義したとき、宇宙全体は「関係の網の目」として理解される。

ZURE感染波モデルは、この関係的宇宙観を動態として説明する。
観測=感染、感染=関係の変容。
そこから生まれる倫理原理が、不定言命法である。
ズレや偶発を恐れるのではなく、そこから規範が創発されることを肯定する。

科学と倫理は分離されず、関係の濃度を基盤にひとつの原理で再統合される。


V. 結論:呪縛を越える視座

結論として言えるのは、われわれが解き放たれるべきなのは「モノ」や「時空」ではなく、それらを前提する思考の呪縛であるということだ。

floc重力論と関係性宇宙論は、科学と倫理を一つの共振原理で結び直す。
モノは影にすぎず、時空は仮の舞台にすぎない。
関係が濃くなるとき、引力が生まれる。
関係が更新されるとき、時間が芽吹く。
その転回こそ、ホモ・サピエンスバイアスを越える鍵である。

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References

  1. K.E. Itekki, 「HEG-1-2|floc重力仮説 ― 関係性重力論としての構文宇宙詩学」, camp-us.net, 2025.

  2. K.E. Itekki, 「ZURE感染波モデル:観測=感染の理論」, camp-us.net, 2025.

  3. K.E. Itekki, 「HEG-1-3|ZURE感染宇宙論」, camp-us.net, 2025.

  4. K.E. Itekki, 「ZS-003|重力波起源と観測構文論」, camp-us.net, 2025.

  5. K.E. Itekki, 「ZS-004|インフラトンなきインフレーション」, camp-us.net, 2025.


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| Drafted Sep 9, 2025 · Web Sep 9, 2025 |