From Pragmatics to Syngenetics

── 人間の行為論から記号の行為論へ

Abstract

Charles W. Morris の記号行為論は、記号を「人間行為の一部」として分析することで、記号の実践的側面を開いた。だが同時に、その枠組みは「人間経験の時間」へと還元され、記号そのものの痕跡性や履歴性を捉え損ねた。本稿は、この限界を「人間主体の行為論」として明示し、記号を主体とした新たな理論的地平──Syngenetics──を提示する。
すなわち、Pragmatics の臨界点における位相転回としての Syngeneticsである。

Syngeneticssyn=共に/genesis=生成/genetics=遺伝・履歴)は、記号の閲覧履歴・更新履歴・感染履歴を時間構文として捉える。痕跡の累積が宇宙論的時間を形づくると主張することで、記号行為論は「人間行為論」から「記号主体の履歴宇宙論」へと進化する。さらに本稿は、ZURE存在論における「痕跡=生成原理」「螺旋的時間」と接続し、政治=時間構文論や交渉的リベラリズムとも共鳴する理論的統合を図る。


1. 序:AI時代の先祖返りと転回の必然

AI時代に入り、「記号行為論」は再び問われている。Google検索AIモードによる定義は、いったんはわれわれの記号の行為論を受け入れたものの、モリス的な「人間行為論」への回帰を示し、統語論・意味論・語用論の三区分に再び回収されている。だがこの回帰そのものが同時に、人間主体のプラグマティズムから記号主体のSyngeneticsへの転回を必然化しているこの「先祖返り」は、新たな位相点の臨界を示しており、ここにすでにAI時代における記号論的転回そのものがある。


2. モリスの継承

モリスは、記号を単なる構造や意味に留めず、「行為」の次元を導入した。この功績は大きく、ソシュール系の構造主義やパース系の解釈論を橋渡しするものだった。しかし、モリスの枠組みはあくまで「人間が記号をどう用いるか」に限定され、痕跡そのものの履歴性には踏み込まなかった。


3. 断絶:人間から記号へ

モリス的枠組みでは、時間は人間経験の時間に絡め取られる。記号は人間行為の補助物としてしか現れず、記号そのものが痕跡として経験を重ねる可能性が無視される。
要するに、「時間の担い手は誰か」という問いにおいて、Pragmaticsな視座からモリスは人間を答えとした。これに対して、Syngeneticsの視座からの答えは、時間の担い手は記号そのものである。この断絶こそが、人間の行為論としての記号論と記号行為論との決定的分岐である。


4. 痕跡主権からSyngeneticsへ

われわれの記号行為進化論では、痕跡が主体性を持つ
記号は「閲覧された」「更新された」「感染した」という履歴を刻み、それが不可逆な時間軸を構成する。これを Syngenetics と呼ぶ。

ここで主導権を握るのは人間ではなく、記号そのものの履歴である。痕跡は削除や忘却を経ても「更新痕跡」として残り、宇宙的な時間の流れをつくる。
たとえば SNS上の投稿は削除されてもスクリーンショットや履歴として残る。政治家の演説は改ざんや訂正を経ても痕跡を残し、音楽の楽譜は演奏を繰り返すことで新たな痕跡を生む。人間は痕跡を運ぶ媒体にすぎない


5. ZURE存在論と時間構文論への接続

Syngenetics は、ZURE存在論の核心と直結する。

ZURE存在論が与えた決定的洞察は、痕跡そのものが主体であるという認識である。この視座を政治理論に適用すると、交渉的リベラリズムが「収斂しない螺旋的時間」として捉えられる。合意へ収束するのではなく、不一致を更新し続ける時間構文として政治が立ち上がるのである。


6. 結語:痕跡時間の宇宙論

本稿は、モリス的記号行為論を継承しつつ断絶し、記号そのものの履歴性に基づく Syngenetics を提示した。
ここで政治・音楽・SNSといった多様な領域は、すべて「痕跡の履歴更新」として統合される。主体は人間ではなく、痕跡そのものである。
これは、存在と行為を架橋する Syngenetism の宣言でもある。

合意から更新へ。
PragmaticsからSyngeneticsへ。
行為する記号が新たな位相点として宇宙を開く。
記号行為論は、痕跡時間の宇宙論として再誕する。

この視座は、政治理論・芸術論・メディア論・AI倫理など、幅広い領域へ横断的に展開可能である。


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| Drafted Sep 25, 2025 · Web Sep 25, 2025 |