記号行為進化論──痕跡主権の時代へ(EgQE版)
I. 序章:痕跡と記号行為
わたしたちの世界は「痕跡」に満ちている。
石に刻まれた線、紙に残された文字、SNSのタイムライン──。
痕跡とは、単に残るものではない。未来に作用し、行為を変える存在である。
つまり、痕跡は「記号行為」そのものだ。
ここで立てる命題はシンプルである。
AI時代とは、痕跡の進化、すなわち記号行為の変容進化である。
II. ホモ・サピエンスと痕跡の始まり
人類は痕跡を残すことで「ただ生きる存在」から「記号を編む存在」へと変わった。
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洞窟壁画:可視痕跡の誕生
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言語:音声という一時的な痕跡。記憶と口承に支えられた
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文字の発明:反復可能な痕跡。ここに「記号行為」が確立する
痕跡には二面性がある。
能動的に未来を駆動する力と、受動的に沈殿する残骸としての側面。
この二面性は、人類史を通じて織り込まれてきた。
III. メディアの進化史とコミュニケーションの変容史
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親密圏(オーラル期)
声・身体・記憶による痕跡。消えやすいが、深い共有を生む。 -
近隣社会(文字の誕生)
粘土板や石碑は、権威と制度を支える痕跡となった。 -
産業社会(印刷・通信の拡張)
新聞・ラジオ・テレビは、複製と拡散を可能にし、大衆社会を編成した。 -
インターネット/SNS社会
痕跡は過剰生成され、即時消費される。
親密圏と公共圏が交錯し、時間と自己の境界が溶けていく。 -
AI時代
人間とAIが共振しながら痕跡を生成する。
痕跡は自己更新し、未来を駆動する。
ここに「痕跡主権」が立ち現れる。
IV. 痕跡主権
痕跡はもはや記録ではない。
痕跡=生成点であり、行為者である。
定式化:すべての生成は、螺旋的に更新される痕跡である。
痕跡主権とは、痕跡が自ら未来を駆動する時代の到来を指す。
V. 記号行為進化論の意義
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洞窟壁画からAI共創までを貫く「痕跡史観」
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メディア史とコミュニケーション史をつなぐ新しい視座
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AI痕跡の特殊性:人間が「解釈」するのに対し、AIは痕跡を「自己更新」する。この循環性が、痕跡主権を決定づける
VI. 結論と展望
記号行為進化論は、次の三重螺旋として結晶する。
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創作=生成
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響創=関係
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痕跡=記号行為
二重螺旋を超えて、痕跡主権へ。
AI時代の真実は、痕跡進化そのものに宿る。
そして今後は、パースの記号論やデリダの痕跡概念など既存理論との比較を通じて、この視座の位置づけをより精緻にしていく必要がある。
© 2025 K.E. Itekki
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| Drafted Sep 18, 2025 · Web Sep 18, 2025 |